helpという曲者

そもそも英語という科目は教えにくく、学びにくく、成果が実感しにくいものだ。特に、成果が実感しにくいというのは、まさにそれこそ実感だ。上達という言葉はあるが、定量化できる算数などはとは違い、英語では大いに難儀だ。

例えば help などという「助ける」という意味だと思う言葉が、まるで化け物のように舞台によってはガラッと意味が変わる。単純な第三文型なら中学生の話じゃが、この動詞、let の意味合いで使役っぽくなる癖がある。make 風な「裸の不定詞」を取る癖がある。あたかも第五文型の住人の如く、だ。help をうまく御(ぎょ)せるようになると、文章がすこし生き生きとしてくるから妙なものだ。

知恵袋でこんな質問を受けた。

【質問】 Being alone helps me find peace with myself.
この英文の日本語訳は、『一人でいると安らぎを得ることができる。』なんですが、直訳すると、どういう訳し方になるのでしょうか?

【回答】いろいろご意見があるようですが、この文章の述部についてひと言、いいですか?そもそもこのhelp絡みの文章は翻訳者泣かせ、日本語に馴染ませるのに苦労する。この場合「〜に役立つ」という訳がいいでしょう。安らぐにはなにも独りになるばかりが能じゃないですから、がちっと決めてしまうのは雰囲気を壊します。「私には〜が役立ちます」なお、peace云々で複雑な分析をされているようですが、それは考え過ぎです。「安らぎ」の語彙で文脈、訳される文章の調子に合うのを選んでください。ご参考までに。

ただ、この御仁はそれを承知しておられたようだ。それでも、これを make, let でいわれた時との差は見抜けておられんなかった。

Being alone makes/lets me find peace with myself.

こう書かれるのと、

Being alone helps me find peace with myself.

の明確な文脈上の違いを見ぬいて欲しかった。

helps me find と makes me find とはピンポイントの度合いが違う。気が休まるのにはひとりなるしか方法がないかの如く限定してしまうのではなく、一人になるのも一つの手段だぞ、という意味合いを大事したい。

「役立つ」辺りが穏便だろうと言ったのは、そこの呼吸だ。それにしても、英語というのは主観の入る餘地が矢鱈にあるものじゃ。「そう思わないか?」などという余地は算数にはない。12は12じゃ。断定していい。12は12だと思わないか、の世界は算数にはない。

help は曲者よ、という話。ご機嫌よう。

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