大晦日の回想

大晦日のショッピングモール。梟翁と通っていたカフェにてモーニングコーヒーを喫す。
今年最後のコーヒーはここでと昨晩思い定めたらとても思いが強くなって、梟翁といつも座っていた席を占めてやろうと、開店と同時に入った。ここのコーヒーは、私にとって椿屋と並ぶくらいおいしい。サイフォンでカップ一杯半が供され値段が椿屋の半分くらいなので、お財布にもやさしい。カフェインに弱くなった私でも、朝に飲めば睡眠への影響はほとんどないのだ。

大晦日にゆっくりカフェに座っているなんて、どうにも不思議な感じがして落ち着かない。一昨年までは、大晦日といえばお節づくりで台所に立ちっぱなしだったのだから……。

例年お節作りは29日からだった。作る品目と作る順番を紙に書き出し、黒豆を煮始めた。ちなみに、我が家の黒豆は硬いものが好まれたので、砂糖を加えた水でいきなり煮始め、3日間かけて何度も煮返すものだった。

小晦日は餅つき機での餅つきがメイン。つきたての餅を大根おろしで食べ、お供え餅とのし餅をこしらえた。昆布巻き用の昆布を水に漬けておき、その水を昆布出汁としていろいろな料理に使った。日持ちのする酢の物(酢れんこん、なます)を作り、数の子の塩抜きをし、干椎茸を戻した。

そして大晦日は、あたかも主婦の決戦場であった。朝から煮物、焼き物、お雑煮の具を次々とやっつけていく。一方梟翁といえば、門飾りや庭の掃除、餅切りくらいしかやることがなく、台所に来ては「大変だなあ。」と声をかけ、本を広げてのんびりしていた。私の作業は「ゆく年くる年」の鐘の音が鳴る頃にようやく終わった。午前0時に新年の挨拶をすると、へとへとになったけれど達成感も大きく、満ち足りた気持ちで布団に入ったものだった。

2020年のお節(かまぼこ以外手作り)

お節はそれぞれタッパーに保存しておき、お重に少しずつ移し並べるだけでよく、お雑煮の具は温めるだけなので、3が日の食事の用意は30分くらいで済んだ。豪華な食材はないけれど、素朴な手作りお節は飽きがこないものだった。それをつまみながら駅伝を観てのんびり過ごす正月を、何年繰り返したことだろう。

そんな年末年始は、梟翁の死によって突然終止符がうたれてしまった。今年(2023年)のお正月はまったく正月らしいことをしなかったけれど、小晦日の昨日は神棚と仏壇を掃除して新しいしめ縄を飾り、年神様を迎える準備だけはした。それでもまだお節を食べたいという気持ちにならないので、作らない。よって、カフェでモーニングとなったのだった。

店長のOさんと「よいお年を。」と挨拶を交わしてカフェを出た。買い物がてらショッピングモールを散歩すると、血行が良くなってカフェインがまわったのだろうか、少し動悸がして軽く眩暈を感じた。

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