「日本丸どこへ行く」 災害対策のリセットを

わしは思う。このたびの瀬戸内沿岸の洪水災害が刻々と広がる様子を見ると、どうやら日本は地震雷にさらに水魔を加えて災害対策を根本的に見直す時がきたようじゃ。見られたじゃろう、いっぱしの舗装道路が水流に下を抉られて落ち込み、一見頑丈そうな土手が哀れぶつ切りになっている姿を。さらに、貯水するはずのダムが一挙に放水して、すでにほどほどの洪水に四苦八苦していた下流域の住民をなんと溺死させ土砂に生き埋めにした話には開いた口が塞がらぬ。

それは屁理屈はあるじゃろう。道路も土手も想定外の水量には勝てぬ、ダムもそれ自体が崩壊するから放水したのだ、と。たしかにそれはあろう。あろうが、それで済むならそれは文字どうり思考停止というものじゃ。このたびの災害はそれ以上の思考を暗に求めておると、わしは思うのじゃ。

先ず考えられる強度じゃ。陥没した状況は一にも二にも土木工事の劣悪を語っている。技術を言う前にあの状況を予測さえもしていない敷設基準の低さが歴然としておる。素人の悲哀、わしは責任ある発言はできはしないが、山を縫うようは道路の敷設には建設基準そのものをぐんと上げてかからねばならぬ。つまり建築行政の失態だ。ぜひ再検討をお願いした。

その上にわしはもう一つ注文があるのじゃ。強度の前に地勢的なデータを駆使して敷設適地を再検討して欲しい、このたびの経験を教訓に敷設ルートの見直しをぜひお願いしたいのじゃ。専門家ではないから細かいデータを駆使はできないが、このたびの被害状況を見ると、土砂崩れと洪水が同時に起きる懸念があるような、本来敷いてはならぬ場所に道を造ったのではないか、と首を捻りたくなるのじゃ。天災のパラダイムが明らかにシフトしていることを斟酌して、地勢的なデータ分析の精度を高めて欲しい。

さて、『放水ダム』の話じゃ。これについては、わしは必須的な点を三点挙げたい。まず、ダムそのものの構造じゃ。「満水になれば崩壊するから、崩壊を防ぐために放水する」という理屈をどう理解せよというのじゃ?満水のまま溢水に任せることはできないのか?満水時の水圧に耐えられるようなダムを造ればよかろう。日本の土木技術では無理というなら、それができる他国から学べばよかろう。何も恥ではないぞよ。厭なら技術開発をするこじゃ。

次ぎに、溢水に任せることはできないということで、放水をした結果は諸賢ご存知の通りじゃ。すでに水に漬かっていた下流域を鉄砲水が襲い、何人ものひとが溺れて死んだのじゃ。放水したダムの関係者が役人根性丸出しで「ダムが壊れないように」の屁理屈を語る姿は、思い出すに反吐がでるのじゃ。よいかな、放水するにしても仕方があろうじゃないか。下流域の様子を見ながら徐々に、段階的に放水できなかったのか。どう弁解を重ねても、この一斉放水の挙は常軌を逸しておる。すでに批判に晒されているらしいが、根本的な検討を加えて結論を出して欲しい。

最後に情報の徹底という話じゃ。一斉放水から下流域の溺死にいたる時間帯で、警報を含む情報はどの様に伝達されていたのか、内容と伝達方法、規模、徹底まで、下流域の人びとにどう伝わっていたのか、また下流域の人びとがどれほど真剣に、忠実に情報を受け止めて対処したかなどなど、情報を出す側と受ける側のそれぞれの姿勢が問われておるのじゃ。

緊急通報や警報など、情報は内容と伝達方法/規模が違うであろう。時間のゆとりが大きなファクターじゃ。早め早めがいいにきまっておる。切羽詰まれば注意喚起の言葉遣いが変わらねばならぬ。状況で「お気をつけください」が「気をつけろ!」に変わっていい。注意を受ける側もそれに応じて行動するものだ。

最後に、われわれ市民の姿勢についてもひと言、耳が痛かろうが黙ってお聴きくだされ。それはこういうことじゃ。

如何じゃろうか、皆さんはそれぞれお住まいの地域で災害時に避難をする場所が指定されておるのをご存知か?地域によって名前は違おうが「ハザードマップ」などといって避難場所を特定して地図化したもので、新聞の折り込みや観覧版に添付されて届けられる。わが家では愚妻の才覚で壁に貼りだされておるが、先日のTVの報道によると、知らない/気づかないの割合が結構高い。どなたにせよ常識として「いざとなったらどこ」という用心ぐらいはして置いて欲しいものじゃ。

ダムの件で見えるこ役人根性は怪しからん。だが、一般市民のなかにも漫然と広がる自意識欠落症状も気になるのじゃ。前段のハザードマップ程度ならまだ許せるが、行政まかせ人まかせ、自助努力の気配もない輩が目につくのじゃ。日頃の学習が足りぬ上に日常の出来ごとから得られる知恵、いわば経験値が枯渇するわけじゃ。

さてさて、これ以上は誰やらの冷や水といわれよう。じゃが、みんながひと頼みをしていたら、この日本丸どこへ漂流するのやら、心配の種は尽きないのう。

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