腑に落ちなかった話(本庶先生のノーベル賞)

京大の本庶佑教授がノーベル賞を受けられた話、いや誠に慶賀の至りじゃ。医学だとか、TVの報道で大まかなところは見知ってはいるのじゃが、いまだもって肝心なところは霧の中じゃ。肺癌の治療薬の開発で功績を挙げられたとか、何でも免疫を抑える効果で癌が消えるといわれてこの門外漢、にわかに戸惑っておる。免疫なる機能については、これが然るべく働いておれば癌をも抑えるものと心得ておったのじゃが、それを「抑える」ことで癌を根絶やしにするという筋道がうまく納得できずに昨日今日慇懃しておった。

その間、本庶先生は奥方を伴っての記者会見で、すこぶる付きの亭主関白癖を披露、滋子夫人がなんとも粋なひと言で先生を操縦された経緯を話すなど、一徹なこの老教授の人となりに惚れ込んだ。が、なお「抑える」話はすっきりせずにおったのじゃ。

それがひょんなことで腑に落ちたのじゃ。本庶話しの某記事がわしの目から鱗を落としてくれたのじゃ。なんでも免疫細胞とやらは、普段は不良品の癌細胞を見つけるとやっつけるのじゃが、大きな癌はなぜか攻撃しなくなるらしい。PD-1なる物質が免疫細胞にカバーを掛けてしまうからじゃという。ではそのカバーを取り去ればよかろうと開発されたのが本庶先生のオプジーボなる薬だというのじゃ。免疫細胞を働きやすくして生体防御機能を大きくし、癌細胞との綱引きに勝たせようとするということのようじゃ。

のっけから「抑える」などの言葉を使うからいけない。カバーを取る、などは秀逸じゃ。お陰で本庶先生の業績がすとんと判った。わしより数年お若い。なんでも幼い頃からの一徹者で、答えに窮する質問を教師に浴びせて顰蹙(ひんしゅく)をかっていたというのじゃが、男はそうなくてはならん。それを見事貫いて巷の賞を総なめにし、今や華のノーベル賞を射止められた。何とも清々しい話じゃ。じゃが忘れてはいかんのが滋子夫人の並々ならぬ功績じゃ。ご自身京大の才媛で、本庶先生との縁がなければ一角の研究者にもなろうかという身を、先生の先を見越して、先生の一徹を敢然と育んだ手腕は見事を通り越して鮮やか。一徹では人後に落ちぬわしにして、これは将に他山の石じゃ。

部位は違うが数ヶ月前に癌治療を経験したわしであっても、免疫療法はついぞ見知らなかった。医療は日進月歩というが、ほかにも先端医療は想像を超えた発展をしているのじゃろう。これを機に、老境の鈍を託(かこ)つより、広く情報を漁って世の進歩に後れぬよう心したいものじゃ。

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