音声入力の効用

最近音声入力というものに興味を持っている。この技術についてはもうかなり前から知っていたのだけれども、実用になるかどうか怪しいもんだと思っていた。世の中の機械翻訳と言われるものが相当でたらめなので、カタリがそのまま文字になるなぞというのは、まだまだ先の出来事だと思っていたのだ。

私は今ホームページを二つ持っている。日本語と英語で様々なテーマを構えて書いているのだが、年相応にミスタッチが多くなり、変換にせよ何にせよ同じことを何遍も繰り返すことが多くなっていた。キーボードの位置関係かと思いさまざまに調整はしてみるのだが、隣同士のキーを重ね打ちしたり、右の小指が届かずpと@を打ち間違えることが多くなっていたのだ。

ある日、何のきっかけだったか、音声入力の実用化が進んでいることを知った。実用化とは大げさなと思いながら、私はその話を追ってみた。ネット上であれこれ情報を取り込んで調べてみたところ、思いがけなくこの実用化話しがまんざらではないように思えてきたのだ。指先の不便を思えば、もし記事を書くのにこれが使えたらどれほど便利になるだろうか。シャベリながら指先から入力できたら効率が上がるかもしれない。

物好きな私は早速ネットから入力用のヘッドフォンタイプのミニマイクを注文した。運悪く届いたマイクは不具合で返品するなどして手間取ったが、ガラクタの中から古い小型マイク探し出し、あれこれ仕立て上げて音声入力の環境をなんとか作り上げた。この辺の細工は機械に強い愚妻が大いに手伝ってくれた。日ごろから目の具合とか指先の不便とか、私の文字入力の環境を気にかけていてくれた彼女にしても、音声入力の効用には大いに期待していたのだ。音声入力がうまくいったら、私の口述原稿を校正清書してもいいという。

あれからもうひと月ほどになるが、私はその間にさまざまな媒体で音声入力を試みている。毎日の日記を口先で書く経験はおかしなもので、日々のあれこれを日記に語りこむ会話的な楽しみが意外に面白い。簡単なメールなども音声入力でほどほどに捌けるようになっている。厄介な漢字はさすがに変換してくれないが、何かと言うと小難しい漢字を使いたがる私の悪い癖が抑えられるという効用もある。Day One というアップル系の日記ソフトも試しに使ってみているが、これなどは日本語対応がうまくいっていないせいか、音声入力では微妙な誤変換が多くなる。日頃使い慣れているワードではさすがに相当な確度で変換してくれるが、それでもかゆいところに手が届くような精度は出ない。

音声入力が記事作りの助けになる可能性を信じて、私はさらに新しいワープロソフトを探し回った。アップルの1Docというソフトもなかなかのもので、日本語変換もワード並みだ。これも悪くない。このソフトについては、英語での音声入力に使えるように開発者に問い合わせてみた。ほどなく返事があって、これこれこうするようにと指示してきた。早速使ってみると、さすがに英語圏のソフトだ、私の英語がさらさらと音声入力できるではないか。英語のホームページでは、今後これを使って「書く」ことにしよう。

さて、ここにegword の Universal 2というワープロソフトがある。ソフト探しの旅で見つけたものだが、これが滅法優れものなのである。日本のものだけに日本語対応がしっかりしている。だから大抵の漢字変換がスムーズにできる。天真爛漫とか驚天動地とか乱痴気騒ぎなどという、日本的な文字遣いが即時変換で音声入力できる、これまで試した入力媒体では最も実用性の高い製品だと思う。現にこの原稿は、多少の指先からの調整はあるにしても、すべてこのソフトから音声入力したものだ。

このソフトにはもう一つ楽しみがある。私は日本語の記事をほとんど原稿用紙を介して書いている。テンプレートに原稿用紙があり、それも音声入力てきることを確認している。この記事のように横文字があちこちに出てくるものは横書きでもいいが、やはり原稿用紙の景色は筆をはかどらせる。そのうちコーヒーを片手に左うちわでものを書く癖がついたら、ひざの劣化の上に指の劣化も進むのではないかと心配もするのである。

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