軽井沢の思い出

先日ひょんな用事で軽井沢を10数年ぶりに訪れた。上越新幹線に乗って軽井沢駅に降り立つのは初めてのこと、桶川から軽井沢までたった1時間20分で着くとは知らなかったので驚いた。車だと2時間はゆうにかかり、電車料金<高速代+ガソリン代とくれば、電車に限るというものだろう。これも一人になってしまったからなのだけど。

午前11時頃、駅に降り立ってきれいな街並みを歩くと心地よい風が迎えてくれた。天気は曇り、気温は24度。最高気温35度を超える酷暑が続く桶川から運ばれた体が、どんどん癒されていくのを感じる。これならいくらでもお散歩したくなる。明治初期に外国人牧師が教会を建て、当時の富裕層が次々と別荘を建ててきた歴史ある避暑地だけのことはあって、並木道が美しい。

別荘を持つような身分ではなく、温泉好きだから温泉の少ない軽井沢に宿泊した機会は少なかったけれど、梟翁とのささやかな思い出がよみがえった。

20年近く前になる。2人で「中山道ウォーク」というバスツアーに参加したことがあった。中山道といっても全部ではなく、軽井沢から塩尻までの約80キロを12回に分けて歩くというツアーである。その始点が軽井沢だったのだ。

爽やかな五月晴れの日、軽井沢に着いてから1時間ほど自由時間があった。昼食はバスの中で配られたお弁当で早めに済ませていたので、「どこかで珈琲でも飲みたいね。」と入った喫茶店の珈琲がとても美味しかったのだ。その喫茶店は「珈琲歌劇」という名前で、中曽根元総理や長島さんなどの著名人も通っていたという。チューダー朝様式の店内装飾や陶磁器のポットで珈琲が供されるなど、洗練された空間が素晴らしい。ゆっくりしたかったけれど、集合時間があるため大慌てで珈琲を飲み干したのだった。

その数年後、梟翁がお義母さんの介護のお礼にと軽井沢でフランス料理を食べさせてくれたことがあった。そのときも「珈琲歌劇」に入りたいと思ったが、時間がなくて立ち寄れなかった。

それからさらに10数年経ったけれど、「珈琲歌劇」は健在だった。ところが、行ったときにはラストオーダーが過ぎていて閉店の看板。というわけで、今回は写真を撮るだけに終わった。

20年ほど前、クラシカルな趣ある店内で、髭もなく作務衣でもない梟翁と、これから始まるウォーキングツアーを前にうきうきした気持ちで過ごした。「ここの珈琲おいしいから、次はゆっくりしたいね。」と話した。そんな記憶の中で梟翁は生きている。記憶とは不思議でありがたいものだなぁ。いつか珈琲歌劇でゆっくり過ごせたら…..、と思う。

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