大脱走、塀のない刑務所は必要か?

広島のとある島で奇妙な捕り物があるそうじゃ。塀のない刑務所から受刑者が逃げだし警察が何千人もの警察官を動員して探しておる。もう十日目だがまだ見つからないようじゃ。

塀がないとは、塀で囲むまでもない模範受刑者だけがいる刑務所とやらでの出来事で、当人は窃盗犯でほどなく釈放を待つ身だったらしい。メディアに事件の絡みで意見を問われた一人の模範囚曰く、ヘルメットの色だけが違う作業衣で一般人に混じって働いているとふと逃げたくなるものだ、と。その誘惑に堪(こら)えて「服役」できるかがミソだそうじゃ。なるほど、その辺り更正できるかどうかの分水嶺なのかも知れぬ。刑務所とすれば、受刑者の自律的判断に委ねようと半ば野放しの仕事環境を設(しつら)えて更正を見守り、万一逃げたら捕まえて刑期を延ばすという罰を科すわけじゃ。

だがしかし、この方式は受刑者監督の有り様としてはどこか作為的に思うのじゃが如何?逃げ道を作っておいて逃げるかどうか容子をみるなどはどうも芸がないといおうか小意地が悪い。

犯人が逮捕される
→5メートルの塀の中に閉じ込められ囚人服で使役に耐えて所定の刑期を服役する。
→模範囚となり塀のない刑務所に移送される。
→そこで一般人さながらの仕事環境で「服役」を続け満期を待つ。

刑務所はその間、盗人にも五分の魂、いや受刑者の人権に配慮して体のいい傍観を続ける。そしてこのたびのような状況が発生する。受刑者の更生を図るとはいいながら,どうも下世話にはややせこいやり方に思えてならんのじゃ。

そこでひとつ格好の提案があるのじゃ。模範囚の更正を促し再犯を防ごうというなら、塀のない刑務所で「何時でも逃げられるのだぞ」風な舞台を作って彼らを様子見する愚を重ねるより、いっそ巷に放って、つまり釈放して実地の観察をしてはどうじゃろうか。盗人にも五分の魂を見ようとするなら、いや、いま流行りの人権を大いに謳い上げようとするなら、すっきり仮釈放してしまうことだ。

但しこれにはわし流の条件があるのじゃ。ひとつ条件を満たした上での仮釈放だ。その条件とはこういうことじゃ。

ご存知、いまはハイテクの時代、オーディオのソニーでさえもが宇宙交信の世界に乗り込む時代じゃ。ナノ単位の精密器機が実用化されておる。ここに高性能の発信器があるとしよう。それも極小の発信器でこれを仮釈放の模範囚の消化器系臓器内に埋め込むのじゃ。この発信器は時限のバッテリーが組み込まれおり、ことなく保釈期間が経過すれば自動で発信不能になり器機は自縛装置が外れ体外に排出され、当人は晴れて社会復帰するというわけじゃ。いま世間を騒がせている逃走事件なども短時間に解決して警察も無様(ぶざま)な醜態を晒すことはない。どうじゃ、秀逸なアイディアじゃろうが?

そう、よーく分かっておる。大方の人権論者はさぞ目を剥くだろうことを充分承知の提案じゃ。考えても見よ。塀なき刑務所の模範囚にしてみれば、色違いのヘルメットを被されて更正意志を試されるよりは、時限の発信器の因果を知らされた上で実社会で自主的に更正への実績をあげるほうが潔(いさぎよ)いと思うに違いなかろうが。

それにしても、十日も島中を逃げ回っている男はどこか知恵者の趣があり探す警察にどこか能なしの趣がある。模範囚だ、遺留品もあるじゃろうに、なぜ賢い警察犬を十頭も投じて追わせないのか?保証してもいい、二日もあればどれか一頭がここ掘れわんわんとこの知恵者を追い詰めてくれように。

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