豆の花盛り

わが庵の菜園はいま花盛りである。花前線は秋田辺りの筈だがと訝られようが、わが庵の花の主(ぬし)はなんと豆たちだ。絹さやとえんどう豆、ともに桃色ならぬ真っ白の豆の花を満開にしている。

ひと頃気温が上がらず、上向いても数日続く一桁の低温が響いて花芽が一向に開かず、もしや今年は豆が愉しめぬかと案じていたのだ。自然はよくしたものである。時が来れば咲く花は咲くもののようで、いま、わが庵は絹さやとえんどう豆がおまちどうさまと言いたげに咲き誇っている。

ところが、蒔いてから気づいたのだが、この二種の豆、つける花が見分けがつかないほどそっくりだ。真っ白よりややアイヴォリー系の艶のある白で、それは無邪気な花だ。悪いことに、蒔いたときに絹さやはこちら、えんどうはあちらと仕分けておくのを忘れ、いまどちらがどこという区別がつかない。入り交じって生えている気配だ。台所を預かる妻は絹とえんどうでは料理の仕様が違うとこぼすが、今更仕方がない。豆らしくなるのを待って、絹とえんどうを摘み分けるしかない。

この豆たち、白い花のうちはいいが実って鞘になると回りの緑に溶け込んで見えなくなるから手に負えない。私が摘んだ後を妻が摘めば、きっと数個の摘み残しがある。近視だからというのは中らない、どっちもどっちの近視だからだが、私が摘み残すのは緑内障のせいではと疑っている。まさかとは思うが、鮮やかな緑がこの病には却って悪いのかも知れない。

それでも豆はありがたい。これから数ヶ月、わが食卓は豆がふんだんに登場する筈だ。菜園の東端にはいんげんがもう数本芽を出している。採りたてのいんげんは胡麻よごしに限る、と、これも今から愉しみにしている。東京を離れて数年、今はもう此処に限ると田舎の贅沢を満喫している。

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