語感の落差のこと:How are you? How do you do?

つき合いの度合いに応じた言葉使いがあるもので、日頃の会話で相手によって無意識に言葉を選んでいる。それはそうでしょう、逢ったばかりのひとに「ねえ、あんた」とは呼び掛けない!じつは英語でもこれは結構きちんとしている。英語ではあなたとあんたの区別がないからといって、気を許してはいけないという話し。

そういえば、日本語にはわたし、わたくし、あたし、おれ、ぼくなどと一人称が多彩だが、英語は I だけということに違和感、でなければ戸惑いを感じないだろうか。まして英語では性別の使い分けはなく、日本語の…ですわ、…かしらなどの女言葉がそもそもない。翻訳などをするひとには、この辺りの呼吸が悩みであり魅力でもあるわけだ。

だが、つき合いの度合いに応じた言葉使いとなると、英語でも俄然喧(やかま)しくなるからご用心。学校で習った通り一遍の英語ではとても間に合わない。単体の言葉でない、状況に合わせた言葉の組み合わせがキーポイントで、これが身につくまで一苦労する。日本語なら、おれとくれば続く文章はそれに応じて崩れてくるが、I ではじめた文章を同じように崩せと言われても、日本人にはなかかなできるものではない。

さて、前口上はほどほどに具体的な例を挙げてみよう。

出会い頭(がしら)の挨拶として学校では二つの表現を教わる:

How are you?
How do you do?
どちらでもよいから語尾のyouかdoを強調して発音しなさい、と教わる。何となく短い方、How are you?を専(もっぱ)ら使い回すことになる(とまあ冗談だが…)。これなどは英語に怯(おび)える(?)日本人には最初の落とし穴だ。

英語もすり切れるほど使ってくると、この二つの表現がつき合いの度合いで使い分けるものだと分かってくる。そのことに気づくか否か、いや、そんな気がするがどうかで、そのひとの英語の語感が試されるといってもいい。そう、初めて会ったひとにのっけからHow are you?とはいえないものなのだ。つまり「お初にお目に掛かります」の語感はHow are you?にはない。これはすでに親しいひと同士が「やあ、元気かい?」How are you doing? What’s cooking?の領域の語感なのだ、ということ。

さて、How do you do?となると続いて I’m pleased to meet you.
とくる語感で、これはまさに初対面の挨拶の定番だ。肩が張った語感だから、多少親しくなっている相手なら、How do you do?を言われておやっと思うかも知れない。How are you?とはそれほど語感の落差がある。

如何だろうか?先刻ご存知の読者には余計なお世話だったかも知れない。が、もし知らなかったひとには、この認識は貴重だ。ぜひ肝に銘じて頂きたい。

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