Fresh Bonito(俳句の英訳)

わが庵はいま新緑の海に漂っている。緑とは言えこの季節のそれは浅緑で、逆光を透過させるかの真新しい緑なのだ。これからひと月、これが見る見るエメラルド色に変容してゆくさまは、この季節の自然の醍醐味と言っていい。

さて、その青葉にホトトギスを重ねて食い気を加えた俳句の逸品、目に青葉山ホトトギス初鰹の感性を外つ国人はどう消化できるものか、ほんの一興に私の手作りの英訳版をご紹介しよう。

Full of greens flood your sight
Little cuckoos up in the height
Fresh bonito as a seasonal delight.

いかがかな。飜訳の妙味は言葉遊びではなく、シチュエイションの転化にある。韻文では日本語の環境でこそ表現できる状況、舞台が前提になっている場合など翻訳不能になりもするのだ。この俳句では鰹の意味合いがそれにあたる。初鰹を尊(たっと)ぶ文化をあれこれ穿(ほじく)りまわすと俳句にならないし英訳などできるものではない。どうだ初鰹、旨かったかと聞かれて寒かったという粋が英訳できるとは思えない。

だから、この英訳版では季節感として鰹を織り込むことで手を打った。せめての行尾の韻が取り柄になっている。音読されてリズムを感じて欲しい。

その昔、ニフティーがフォーラムを組んでいたとき(まだあるなら失敬だが)海外の俳句フォーラムに立ち込んでいっとき遊んだことがある。アメリカ辺り、俳句ファンが結構いて私の俳句談義を愉しんでくれた。あの国にもE.E. Cummingsなど異風な詩人が言葉少なに詠う文化があるにはあるから、俳句の妙は相当消化できるらしいのだ。

いかがだろうか、諸賢の英語学習に味を加える意味で、辞書を引き引きの和文英訳を措いて語感音感の世界に遊ばれては?古池やでも朝顔にでも、お好みの俳句を英語の世界に蘇生させる愉快を経験されることをぜひお薦めする。出来映えがよければ、コメントでご紹介いただければ望外だ。

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