1年経って(一周忌に思うこと)

失ったからこそしみじみ分かることがある。
梟翁の時が止まって私の時だけが進んでいくときに、遠ざかっていく二人の時の輪郭が見えてきて、それがどんなに有り難かったのかがわかった。だから、その時から離れたくないと思いながら過ごしたけれど、時は止まらずに1年が経ち、総天然色だった思い出がほんの少しセピアがかってきているのが寂しい。

幸い生活のパターンを変える必要がないので、相変わらず遺影に話しかけながら、鶏の世話と庭仕事、そしてちょっとしたボランティアをしながら暮らしている。

でも、つっかえ棒がなくなり一人で立っていないといけないので、いつも気が張っている。体調を崩して寝込んだりしたら大変なので、食事や睡眠に前にも増して気を遣うし、外に出ても事故などに遭わないよう前にも増して注意するようになった。気を弛められないのはしんどいけれど、野生の小動物になったつもりで慣れなければ、と思っている。

20代で母を失ったときは、「母は私の記憶の中でずっと生きているんだ。」と思ったものだった。そして時を経て誰よりも大切な夫を失ってみると、一歩進んで、「梟翁の魂はずっとどこかで私を見守ってくれていて、私がそれを思っている限り繋がっているはずだ。」と、思うようになった。田坂広志著「死は存在しない」を読んで、そうだそうだと頷いた。

一年経って、もしかすると?と気付いていることがある。梟翁は自称「晴れ男」だった。旅行や何かの行事のおりに、雨で悩まされることがほとんどなかった。車で移動中は雨でも、目的地では私たちが滞在している間だけ雨があがったり弱くなったりということが多かった。最初は眉唾に思っていた私も、そのうち信じるようになっていった。

対して私は自称「雨女」で、一人で外出したときは雨に悩まされることが多かった。でもこの一年、梟翁と一緒にいたときと同じように、雨に悩まされることがほとんどなかったのだ。法要で同じ場所から同時刻に帰った親戚から「出てすぐにゲリラ豪雨に逢って大変だった。」(私はまったく雨に遭わなかった)と聞いたり、外出時に雨の予報でも降らなかったり。まるで梟翁と一緒にいるようなのだ。

やっぱり魂が繋がっているようで嬉しい。思いを寄せていれば魂は応えてくれると信じて、なんとなく一緒にいるような気持ちで余生を過ごそうと思っている。

それにしても、梟翁は本当にいい男だったなぁ。(一周忌に免じておのろけをお許しください)

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コメント

    • LittleForest
    • 2023年 9月 26日

    ご主人がお亡くなりになって、1年が経つのですね。

    ブログを運営し続けるのは、ある種のマラソンのようなもので、持久力がいることだと思います。
    この1年、亡き御主人様の忘れ形見とも言えるこのサイトの継続、おつかれさまです。

    奥様のつづる、語りかけるような優しい書体の文章を日々の疲れを忘れて拝読しておりました。
    同時に、奥様の御主人への変わることない想いも心にしみます。

    私も数年前に父を亡くし、追いつくにはまだまだではありますが、父の年齢に近づきつつあります。
    所帯を持ち、家族を持ち、その年齢ごとに亡父どう考えていたか、実感する毎日です。
    この思いのひとかけらでも持っていたら、もう少し優しく接することができたのでは?と悔いております。
    同時に、今まで抱いたこともなかった感謝の念も抱いております。

    私事ですが、そのようなことを思い起こしました。

    真夏の猛暑から一転、肌寒い朝夕が訪れるようになりましたね。
    ようやくエアコンから自然の風を楽しめるようになりました。
    季節の変わり目、体調崩されないようご自愛ください。

      • keiko
      • 2023年 9月 28日

      LittleForest様、再びのコメントを寄せていただき、ありがとうございます。

      ジョギング程度のスピードとはいえ、亡き主人と一緒に作ってきたホームページが途絶えないようにと頑張っておりますので、LittleForest様のお優しい感想は何よりの励みになりました。
      心より御礼申し上げます。

      私の拙文を、亡くなられたお父様への想いに重ねて読んでいただけて、嬉しく思います。言葉を紡ぐ楽しさと難しさを感じつつ、これからも訥々と続けていこうと思っています。

      昨日今日と夏のような暑さがぶり返しておりますが、この秋がLittleForest様にとって実り多きものとなりますよう、桶川の空の下よりお祈り申し上げております。

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