倒置の話し

「ほんとに馬鹿だよ、おまえは…」などという、咄嗟の表現には日本語でも「倒置」という語法があります。とくに違和感がないのは、結構使い慣れているからで、文法を持ち出してくると何かと屁理屈が言える。それは英語でも言えることで、ある日の知恵袋でこんな質問があった:

Q. ある英文なんですが In the house stood a man の、日本語訳が その家の中に一人の男が立っていた なのですが、なぜ倒置が起きるのですか? 
前置詞 動詞 主語の並びの意味が分かりません 教えて下さい。

この日の私は虫の居所が良かったようで、この悩める英語人のオリエンテーションに役立ったようです。


A. 英語の場合文章の頭がもっとも重要だと云われています。日本でもそれはあるのですが(俺だ、それやったのは)、英語では文章の要素を前へ引っ張り出しては強調します。強調構文といわれるのは大抵文頭へ出すか倒置をするか、両方とも同時にやるかです。

● In the house stood a man. などは典型的な強調構文で【文頭へ】と【倒置して】を同時にしているケースです。もちろんオリジナルな文章は A man(S) stood(V) in the house(副詞句). ですね。これも構文的には主語を強調したといえなくもないのです。実は主語というのは重要だからこそそもそも文頭にあるんだ、と考えてください。

● この文には要素が三つあります。あなたの例題では取りあえず副詞句を強調した、ついでに主語と動詞を逆転させたということ。文頭へ出して副詞句、つまり【どこに】という部分を強調したことはお分かりですね。あともうひとつ、動詞を強調することもとくに詩の世界ではあるのです。この文章を動詞を強調して書くと:

Stood a man in the house. となる。ただ日常にこんないい方をするひとはいませんが…..。できることはできる。作品によってはこれでとても迫力が生まれる。動詞ですからね、動きが強調されてぱりっとして文章ができる。ここでも倒置が行われていますね。

● だから、こう考えてください。文頭が重要だから主語がくる、次に重要なのが動詞だから文型ではみなS+Vと並んでいる。倒置も動詞をできるだけ前へ出したいから倒置するのだと考えるといい。

戻ってあなたの例文で stood a man と倒置されているのもおなじ説明で納得できるでしょう。重要な動詞を前へ前へ出そうする、それが倒置のもともとの考えなのです。

★ 文法というのは文章の使われ方を説明するマニュアルです。どう使われているかが先にあって文法は後からついてきます。強調構文などはいろいろありますから、まずたくさん例文を見て、見尽くしてから文法を見ると「なるほどな」と思うことが多いのです。

ご参考までに。


♪ ありがとうございます
とてもためになりました。
説明がとても上手いですね。

分詞が前置されたり、なかなか一筋縄ではいきませんが、頭柔らかくして勉強したいと思います
。ありがとうございました。

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