「三年目」(Three Years to Grow)

梟翁が亡くなって三年が経った。早いようで遅く、長いようで短い。この世に取り残されてからの私は、淡々と過ぎていく時間に漂うクラゲのようなものなのだ。

もうすぐ3年、、3年目、、と思いを巡らしていたときに、ふと思い出した!「三年目」を出さなければ、と。

「三年目」は、キンドルで出版してきた古典落語英訳シリーズの6作目なのだ。梟翁の遺作である。梟翁が病床につく直前までキンドル版を作る作業をしていたもののずっと中断していた。梟翁が旅立ってからは、早くアップしなければと思いながらも、悲しみに暮れ降りかかってくる雑事にかまけているうちに、一年近くが経ってしまった。

一周忌までに出したいと考えた時は、根を詰める作業が苦になっていたこともあり、「『三年目』だから、このさい三年目に出そう!」と苦し紛れに先延ばししたのだった。

梟翁は、落語の話し言葉が持つ微妙なニュアンスやリズムをも英語に置き換えて、眼の青い落語家を育てる一助にしようという野心のもと、古典落語の英訳12作品をキンドル出版するという目標を掲げていたが、12の半分で力尽きることとなった。

遺作の「三年目」を出さなければ、あの世で愛想を尽かされるかもしれない。そんな強迫観念をエネルギーにして、この2週間ほどかけて目眩をごまかしながら何とかキンドル出版をすることができた。

「三年目」は夫婦の絆と女性の恥じらいを描いたなんとも微笑ましい話で、死んだ女房が三年目の命日に幽霊として夫の前にあらわれるシーンがクライマックスとなっている。

昨日は三回目の命日だった。お墓に「三年目」を出したことも報告してきた。でも昨晩、ほのかな期待に反して、丑三つ時に梟翁があらわれることはなかった。もし出ていたら、髭がタゴールよりも伸びていただろうか。

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