On my three!

言葉の面白さはその裏側の文化の違いだ。虫の知らせなどというのは日本語の感覚で、a little bird told me…などは英語の語感、「そんな気がする」というだけのことが、文化の違いで虫と鳥に分かれるなぞ、なんとも面白い。それが面白いから英語をやったわけではないが、勉強が浅いころは気付かず深まれば自然とわかってくるところがいかにも面白い。

この手の表現は学校では教えてくれないところがまた面白い。先生も知らない類の枝葉の知識で、コチコチの教科書英語には縁のない語彙だから、指導要領で教える先生が知るはずもない。ただ、生き生きとした英語を覚えよう、いや身に付けようとするなら、この辺の言い回しに通じていることがどれほど役に立つか、それは長年英語と付き合っていれば沁みじみ分かるのだ。本稿ではそんな話をご披露しよう。

何か重いものを何人かで持ち上げようというとき掛け声を掛ける。日本語では咄嗟に「せーの!」というだろう。どんな辞書を持ってきてもこれは出ていない。語彙という言葉じゃない。一斉に力を寄せ合う掛け声だから、だれかが「せーの!」というわけだ。そんな状況はアメリカでも起こる。そんなときあの人たちは何というだろうか。”On my three! One, two …” とだれかが声を掛け、残りがそれに従って ”three!” で持ち上げるのだ。

面白いのは「せーの」はその場の全員が斉唱するのだが、あちらでは言い出しっぺのだれかの ”On my three、one, two…” に合わせて残りが無言で力を合わせるのだ。虫と鳥と同じでちょっと感覚が違う。それが面白い。

似たようなものだが、「よいしょ、こらしょ」はどうだ。一緒にものを運ぶときに拍子をつけて力の入れ具合をシンクロさせる掛け声だ。これも洋の東西を問わない。いろいろバリエーションはあるが、英語では ”Easy does it.” という。これを ”Ea-sy does it.” と四拍に刻む。語感としては「気を付けろよ」の感じだが、五月蠅いことをいえば文法的に支離滅裂だ。学校英語では説明のしようがない種類の表現で、現に日常使われている表現だから四の五もない。

この手の言い回しは始末が悪い。文法など糞喰らえで言いたい放題だ。だから覚えるしかない。それも言い回しだけ何回繰り返しても、覚えられるものではない。この手のイディオムは状況と一緒に覚えるに限る。映画などで「現場」の様子が見えればいいが、なかなかないものだ。ならば、誰かと何か重いものを運ぶ状況を「想像」するしかない。

英語圏で生活することのメリットはそこにある。想像するまでもない、そんな状況は随所に起きる。起きるから掛け声に参加できる。留学する機会でもあれば、勉強ばかりが能ではない。生活の多岐な場面に絡んで実地で覚えることだ。

たかが掛け声と云う勿かれ。英語を覚える王道は学習ではない。経験からの刷り込みだ。 “On my three!” の意味は大きく深いのである。

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