にんじんしりしりとヘバーデン結節

2年前に梟翁がバネ指の治療でお世話になった、熊谷の手外科を受診してきた。1年以上前から、右手中指の第一関節が異常に腫れて気になっていたのだ。ネットで調べると「ヘバーデン結節」という病気で、40代以降の女性に多く発症するそうだ。進行すると激痛が走ることもあるらしい。

まだ痛みはないものの、手をしっかりと握れなくなってきたので医師の診断を仰ぐことにした。レントゲンを撮ると、明らかに第一関節の骨が異常な形に変形している。お隣の薬指にもその傾向が出ていた。医師の話では、痛みで生活に支障がでたり、もっと腫れて皮が破れてしまったりしたらまた来てください、とのこと。とりあえずリウマチでないことは確定したけれど、爆弾を抱えているようで先行き心許ない。寄る年波、と受け入れていくしかないのだろう。

この右手中指にヘバーデン結節が出たのには、思い当たることがあった。「にんじんしりしり」である。にんじんしりしりとは沖縄の郷土料理。人参を目の粗いおろし道具で”しりしり”したものを炒めて卵と合わせていただく料理で、味、栄養、見た目の三拍子そろった優れものなのだ。「人参しりしり」ではなく、あくまでも「にんじんしりしり」なのが面白い。

10年以上前、夫婦で沖縄に行った時に、にんじんしりしりに出会った。ホテルのバイキングに必ずあったので何度も食べ、市場でおばあちゃんが大量の人参を削っている様子を見、何より名前のインパクトが強烈だったので、帰ったら早速作りたくなった。

ホームセンターで”しりしり”できるような目の粗いおろし金を買ってきてチャレンジしたところ、おいしいにんじんしりしりが出来て悦に入っていた。ところが4、5回目だったろうか?人参を削るときに指を削ってしまったのだ。右手の中指の第一関節の出っ張ったところを思いきり…。目が粗いおろし金の傷は大根おろしの傷とは比べものにならないほど深く、白い骨がちょっと覗いていた。なかなか血が止まらずに往生したけれど、家の救急薬で手当して、一ヶ月以上かかって肉が盛り上がって治った。

爾来それに懲りて、”しりしり”する時は人参を持つ右手に軍手をつけることにした。鶏を飼うようになってから、卵料理のにんじんしりしりは我が家に欠かせないメニューとしてますます活躍したものだった。

診察室におろし金を持って行き、「このおろし金で第一関節を削って深い傷を負ったのが原因と思う。」と説明したら、医師は「そうかもしれないけど、隣の薬指にも出ているからなあ。」と、私の体質の問題と言いたげだった。それもあるにせよ、私はおろし金の傷が引き金で発症し、薬指にも伝播したと確信している。

「風が吹けば桶屋が儲かる」さながらに、にんじんしりしりを食べてヘバーデン結節になってしまったというトホホなお話しでした。

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