一ヶ月以上更新が滞ってしまった。
その間書き物をしなかった訳ではないけれど、掲載できるようなものが書けなかったのだ。
相続問題である。思えば2年ほど前、「俺の財産をお前が全部引き継ぐという遺言書を書こうと思うんだが…。」と持ちかけられた時、彼の死を考えるのが嫌だったので「九十歳になってからで十分よ。」と返したことが祟ってしまった。しかも、遺言書などなくても妻が夫の財産を引き継ぐのが当然のように思っていたという世間知らずだったのだ。そんな私がせちがらい世間の風をまともにくらってしまい、心は乱れ嵐が吹くこととなった。
これ以上細かいことは書けない。私なりに頑張っているものの、梟翁ならではの目からウロコの知恵のあるアドバイスは、もう得られない。友人に愚痴を聞いてもらうくらいが関の山だ。面倒な問題は梟翁に相談すれば大丈夫というぬるま湯はもうなくなったことを思い知った数ヶ月だった。
それでも弁護士さんとの相談を経て最善と最悪の範囲を決めることができ、少しは気持ちが落ち着いてきた。何にせよ見通しはついた。相続税もかからない程度の財産なのに、法律は時として暴力的なものだと悟った。
今月の月命日。いつものように墓参をしてきた。我が家で元気に咲いているアルストロメリアの花と、梟翁が好きだった心太と甘味を供え、読経をした。
このお墓は40年ほど前に梟翁が建てたもので、墓石の家名は出来合いのフォントではなく、梟翁が揮毫したものを彫っていただいたものだ。今は両親と弟さん、そして梟翁の四人が眠っている。次に入るのは私。お義父さん・弟さんとは面識がないもののお義母さんは好きだし、何の迷いもない。
景色がよい高台の墓地。源頼朝の庇護をうけた慈光寺も建つ奥武蔵の山々が一望できる。家から車で一時間ほどかかるのが難だけど、梟翁はもちろんのこと、ご両親も気に入っていたというこのお墓に毎月ドライブを兼ねて通うのだ。途中の古民家カフェやお蕎麦やさんに立ち寄るのも楽しみになっている。
あと何年私に時間があるだろう。二人で暮らした思い出いっぱいの家に住み、鶏の世話や畑仕事、庭仕事をしながら、ゆっくり遺品整理と自分の身仕舞いを進めよう。その後ならいつお墓に入ってもいいと思う。「それまで待っていてね。」と声をかけてお墓を後にした。
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