このところ世界に奇態な出来事が頻発してゐる。新コロ話あり気候変動あり、脱炭素をめぐる諸々の騒ぎあり、と、世はまさに異常現象のオンパレードだ。新コロにしてからが、つい数日前に南アフリカでオミクロンなる新株が発生、それ第六波だぞと世間が浮き足立ってをる。踏んだり蹴ったとはこのことだ。一稿や二稿はわけなく書ける事態だが、表題の如く本稿は、その最中頗る珍な話題を取り上げたいのだが如何。
バイデン米大統領が呼び掛けてゐる民主主義サミットなるオンラインの集まり、それを牽制して中共政権が白書を書き上げ、われわれには自前の民主主義があると吹いた話がある。民主主義には国毎にバージョンがあって、アメリカが民主主義の元祖と謳うなどは噴飯物だ、とかう喝破してをる。
そのニュースがテレビで流れたとき、それを綴る文字遣ひの粋なこと!白書に曰く、
・中国の近代化では、西洋の民主主義モデルをそのまま模倣するのではなく中国式民主主義を創造した
・中国は独自に質の高い民主主義を実践してきた
・民主主義は多様なものであり、国によって形態が異なるのは必然だ。国が民主的かどうかは、その国の国民が判断することで、外部が口を挟むことではない
報道担当官は、屋上に屋を重ねて曰く、
・民主主義は少数の国家の専売特許ではない。アメリカは民主主義のリーダーだと自慢してゐるが、実際は民主主義を掲げて、社会制度や発展モデルが異なる国々を抑圧してゐる、云々。
その荒唐無稽さに一瞬は吹き出したものの、筆者の脳裏には途端に一連の現象が走馬灯の如く走った。昨年の米大統領選挙でのBLM絡みの騒動、その後のアメリカの社会的疲弊、バイデン氏の形相に見え隠れする不穏な風情、さらに中露の軍船や航空機が日本周辺を遊弋(ゆうよく)する姿などなど。さういえば、相前後してロシアが民主主義がどうのと声明を発表して前記白書の意図を掩護するが如き姿勢を見せてゐる。
思えば、中露に指摘されるまでもなく、アメリカの勢威が萎えてゐるのは誰の目にも明らかだ。下世話な言ひ方なら、衰退の兆し著しいアメリカは舐められてをる。その傘下に寝転ぶ日本は舐める価値も無く貶(おとし)められてをる。
兼ねてより政治絡みの物言ひは避けてをる筆者だが、今次の民主主義談義は流石に看過できない。何を言ふかと気色ぶっては見たが、民主主義の総本山たるアメリカの勢威の衰えが如実で、被地で流行る風邪は旬日で伝染し来るわが日本でも、社会的劣化の兆しがある今、自戒すべきことの多さに愕然とする。わが民主主義に中露が嘲笑う何かがある、と自省せねばなるまい。
岸田政権が発足して旬日、その足して二で割る安易な姿勢がすでに反故を来している。加えて、国が依って立つ民主主義の価(あたい)を全体主義の本尊中露に問われては、何とも日本の立つ瀬がない。以って戒(いまし)むべし。
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