わが庵は旧中山道桶川宿の在、この季節、かつては畑と田んぼが織り上げる緑の絨毯だったが、いまはまったく様変わりした。ほど近くに圏央道が通り、便利にはなったが田舎の風情はめっきり萎えた。
それでも花々が咲きそろう頃になれば、さすがに辺りは都会にはない、菜の花に噎(む)せる田舎の佇まいが映える。ちょっと足を伸ばせば東松山に牡丹の箭弓神社あり、隣村の伊奈にはバラ園が見事だ。
先週のことだ。亡母を連れていって喜ばれたポピー畑が見頃かと、出向いてみれば何のことはない、目当ての畑が忽然と消えていた。まぐれ咲きの一、二輪を蕾ごと採って持ち帰ったが、じわっとポピーへの想いが残った。
連休明けの月曜日、桶川の北、鴻巣にある日本一だという「ポピー・ハッピースクエア」に出向いた。もちろん先日の仇を返す心算だ。鴻巣から旧中山道を西へ、田舎道を辿るとほどなく一面のポピー畑だ。だが、仇討ちのはずが返り討ちの体で、聞けばまだ一分咲き、満開はまだ先だという。またしてもこの花に裏切られた。
とはいえ、早咲きと思しき花はしっかり咲いていた。カリフォルニアポピーという品種は一角の畑ごとほぼ満開だったのが救いだ。
家の仏壇には、まぐれ咲きの花に紛れて持ち帰ったポピーの蕾が、亡母の思いが通じてか、鮮やかに咲き誇っている。よく見ればどこか気力豊かな花だ。今日の様子では、もう十日もすればあの辺り、見渡すばかりのポピー、ポピーだろう。
三度目の正直と言うではないか、月半ばには是非ポピーの仇討ちを果たしたい、と手ぐすねを引いている。
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