六十数年ぶりに母校を訪れる機会があった。別掲の翻訳書を贈ろうという企画で、かねてから同窓会「麗和会」の藤野事務局長と調整していた日取りが整い、2月7日に麗和会館に伺った。
わが母校は県立浦和高校だ。口幅ったいが公立高校ではまず日本一か、という伝統校だ。男子校の雰囲気が横溢する佇まいが、いまなお清々しい。藤野氏によれば、シンボルの大銀杏が「枯れなんとしている」とのこと、言われれば、たしかにその気配が濃い。理由がなんとも時代の移ろいを思わせるもので、外回りの交通事情から、伝統のマラソンが構内に限られたことから、大銀杏の周囲が踏み固められた結果だという。なんということか。
展示室の充実ぶりが印象的で、五十里(いかり)校長の姿、歴史の織本、数学の倉持ら諸先生を集合写真に見つけて、ひとり悦に入った。流石、六十数年の時間の流れには説得力があるものだ、と実感。
かつての正面玄関口が「パルテノン」と諡(おくりな)されて中庭に鎮座していたこと、杖を振って歩く私を見かけた現役生があちこちでお辞儀をしてくれた愉快は例えようがなかった。
わが翻訳書が浦高図書館と同窓会の麗和会館の書架に並ぶという。欣快の極みだ。
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