今年もノーベル賞の季節、さて日本人の誰がどの分野で、とストックホルム発のニュースを見守っていた折も折、今年はリチューム電池で日本人に決まったと云ふ速報が入った。詳細は不明の速報、さて詳細はどうかと注目してゐると、リチュームでもリチュームイオン電池で日本人は旭化成の吉野彰さんだと云ふ。リチュームと聞いてボタン電池かと思ったは勘違い、ほっとひと息。
いや、ボタン電池かと思ったのはひたすら恥ずかしい。改めて曰くを聞けば、このリチュームイオン電池なるものは今や巷に溢れるスマートフォンからパソコンまで不可欠な品物らしいと、さらに近未来の花形、電気自動車を支える鍵だと知って仰天、それを十年越しで研究開発した吉野さんがノーベル賞を受賞したニュースの意味を改めて納得した次第。
吉野さんは記者会見での質疑応答でかう云った:
「(ノーベル賞では)化学の分野は広く順ぐりに評価される。私の関わる分野がほどなく回ってくるだらう、と。回ってきたらきっと取ってやる、と思ってました。」
聞けば、吉野さんの周辺では十年越しでノーベル賞の受賞が語られた来たと云ふ。この電池の汎用性、将に時の申し子としての効用を考へると、吉野さんの授賞はどうやら時間の問題だったらしい。
さて、このリチュームイオン電池とは何かと云ふ話し、ノーベル委員会は受賞理由を説明して、「軽くて再充電できる強力なバッテリーで、いまでは小型の携帯電話やノートパソコン、電気自動車などあらゆるものに使われてゐる。太陽光や風力などのエネルギーを十分ためることができ、化石燃料が必要ではない社会を作り出すことも可能にする」としてゐる。何と云ふことはない、将に近未来の必要要件をすべて満たしてゐる品物だ。当然過ぎるほどのノーベルものだ。
ここに至るまで、吉野さんは何段かの階段を登ってきてゐる。まず、充電できる電池の小型化と軽量化を目指して、さきにノーベル化学賞を受賞している白川英樹さんが発見した電気を通すプラスチック「ポリアセチレン」を電極に利用する研究をした。
そして昭和60年、「コバルト酸リチウム」という化合物の電極と、炭素繊維の電極を組み合はせて「リチウムイオン電池」の原型の開発に成功した。今回ともに授賞したジョン・グッドイナフさんたちの研究成果を土台にした成果だった。
ノーベル賞受賞まで、吉野さんはすでに輝かしい受賞歴がある。平成16年に紫綬褒章を受章したほか、平成26年には工学分野のノーベル賞と称されるアメリカの「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」、今年になってヨーロッパの特許庁が主催の「欧州発明家賞」を受賞してをられる。
日本人のノーベル賞受賞者は、去年の本庶佑さん(医学・生理学賞)に続き、アメリカ国籍を取得した人を含む27人目、化学では9年前の鈴木章さんと根岸英一さんに次いで8人目だ。
吉野さんは大阪府吹田市出身で71歳。ノーベル賞受賞者を多く輩出してゐる京都大学の出身だ。大学院を修了後、旭化成に入社、電池の研究開発部門を統べながら一昨年から名城大学の教授も務めてゐる。
これは私見だが、今年のノーベル賞は吉野さんで打ち止めにして欲しいものだ、と思ってゐる。
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