問はず語りの弁・キンドル本の上梓

問はれることなく思ひを語ると云ふ趣向、久し振りのキンドル本「梟翁不問がたり(きょうおうとはずがたり)」を今日上梓した。HPで書き溜めた文章のこれはと思ふものを選りすぐり、歴史的仮名遣いに改めて翁口調(おきなぐちゃう)で語り直したもの。これを機にHPでも旧仮名遣ひに戻させていただく。暫くはお目をわずらさうが、何卒お許しを。

この本の構想は、この場でものを書くやうになって間もなく、さうだ、昔馴染んだ仮名遣ひで書けたらさぞやと思ひついたのだったが、HPの立ち上げ間もなく、環境に慣れることが先決と見送ったのだ。かうして今、幼い頃の綴り方を懐かしく思ひ起こす。流石に暫くはあちこちで仮名遣ひに乱れが出るやも知れず、大いに不安があるのだが、そこは昔取った杵柄(きねづか)、追々に取り戻して行かうと思ってゐる。


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書名中の梟翁は私のこと、日頃から「ふくろふ」に惹かれ、不苦老と読み福郎と読んではこの身の有り様を描いて悦に入ってゐた。ある時、某文芸ブログに招かれて随想集を始め、題して梟翁夜話としたのがきっかけで、私は俄にこの言葉を好んで弄ぶやうになった。すでに数点雑文を上梓してゐるキンドルで、いつかは随想録をと目論んでゐたが、このほどその第一輯(しゅう)を上梓するに至ったわけだ。以後、これを四季を彩って四輯とするか、暦に準(なぞら)へて十二輯に纏めやうか、愉しく思案中である。

閑話休題。

先日、ひょんなことで松本清張の一代記めいた記録をユーチューブで観た。八十余歳で物故されたこの異色作家は、半ばの四十歳代でもの書きになり、高等小学校までの浅学を厭はず敢然と語り部の径(みち)に入り込み、厖大な数の作品を残し、その阿修羅の如き書きっぷりに、人は覆面代作者の存在すら疑った。かく云ふ私もそのひとりで、あれほどの作品をあれほどの緊張感で書き切れまいと思った。が、それは下衆の勘繰り、清張は文字通り書き切った。さう確信したには彼が終生呟き通したひと言がある。

「時間がない」

誤解なさいますな。この稀代の異色作家とわが身を比する気など、私にはさらさらない。ただ、時間がないという切迫感に私は思ひ当たる節がある。それは、日頃周囲にも語り、自分にも絶えることなく戒めてゐる意識だからだ。いま、懸案の随想集の初輯を上げての思ひがまさにそれだ。「梟翁不問がたり」、ご玩味いただければさいわいです。

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